大阪市北区を拠点に、中学受験算数をメインにオンライン指導を行う「受験Lab」。算数のweb講座をはじめ、リモート個別指導、保護者向けの受験コンサルティングを手がけています。
代表の州崎真弘氏がプロ講師として教壇に立ち始めたのは19歳のとき。指導歴は31年、これまでに指導した生徒は5,200名以上にのぼります。灘中・開成中をはじめとする難関中学の受験生を指導し、浜学園などの大手進学塾では最難関クラスを担当してきました。
著書に、重版となった『算数のプロが教える計算のコツ』(すばる舎)など。2026年9月16日には、KADOKAWAより新刊『中学入試 はじめの一冊 ぜんぶマンガでわかる算数』全3冊が発売されます。これにより、著書は海外版を含め累計12冊となります。
では、31年の指導現場で州崎氏は何を見てきたのか。そして、伸びる生徒と、塾選びで保護者が見るべき点はどこにあるのか。ゼロ塾ガイドは、州崎氏に独自に取材しました。

「この仕事をずっとやろうとは思っていなかった」。独立の起点になった、生徒の一言

渡辺なおやーまず、受験Labを立ち上げた経緯を教えてください
実は、この仕事をずっと続けようとは、さらさら思っていませんでした。
学生の頃、アルバイトではなく、プロ契約の講師としてこの世界に入りました。
とはいえ、「よし、この道でやっていくぞ」とがむしゃらに頑張っていたわけでもありません。むしろ、「いつかは辞めるんだろうな」と思いながら続けていた、というのが正直なところです。
ところが、仕事そのものが自分に合っていたのか、生徒からも塾からもそれなりに評価をいただけました。そうこうしているうちに、気がつけばずいぶん長く続けていた――そんな感じです。
渡辺なおやーそれが、なぜ独立につながったのでしょうか?
きっかけは、たった一人の生徒でした。
ちょうど僕自身、この仕事を辞めようかと思っていた時期です。僕のクラスの生徒(5年生の女の子)が、引っ越しで塾に通えなくなることになりました。
その子が言ってくれたんです。
「州崎先生の授業だけはどうしても受けたい」と。
それは、やっぱり嬉しかったですね。
僕が別の校舎に移ったとき、わざわざそこまで追いかけて授業を受けに来てくれる子は、それまでもいました。でも、引っ越しとなれば話は別です。物理的に通えない。
だったら、生徒が教室に来なくても、僕の授業を受けられるようにすればいい。
どこに住んでいても、僕の授業を届けられる形にすればいいじゃないか、と。
それで授業の配信を始めました。
独立して自由にやりたいとか、自分の看板で勝負したいとか、ましてやこれで儲けようとか。そんな発想は、当時まったくありませんでした。
いや、自由にやりたい気持ちは少しあったかな(笑)。
考えていたのは、ただ一つ。
「この子が、これからも僕の授業を受けるにはどうすればいいか」
そして、それを実現しようとすると、塾に在籍したままではできなかった。
だから独立した。
振り返ってみると、僕の場合は「独立したかった」というより、一人の生徒に授業を届けようとした結果、独立することになったんです。
渡辺なおやー全国に向けて、という発想もあったのでしょうか
ありました。
目の前の生徒が、これだけ「僕の授業を受けたい」と言ってくれる。
だったら、日本中、さらには海外にいても、僕の授業を一度見てもらえれば、「受けてみたい」と思ってくれる子がいるんじゃないか、そう考えたんです。
それなら、住んでいる場所は関係ない。東京でも北海道でも沖縄でも、あるいは海外でも。どこにいても、同じように僕の授業を受けられるようにすればいい。
そう考えて、動画配信を始めました。
渡辺なおやー本を出されたのも、その頃だと伺いました
はい。ただ、はじめから出版ありきで考えていたわけではなく、最初の一冊に関して言えば、「自分が何者なのか」を知ってもらうための名刺、という意味合いもありました。
例えば、お店だって「今日からオープンしました」だけでは、お客さんは来ませんよね。どんな店で、何を提供しているのか。まず知ってもらわないと始まらない。
塾も少し似ているかもしれないです。
「オンラインで授業を配信します」と言っても、受講する側からすれば、「いや、お前は誰やねん」となるはず(笑)。
だったら、まず自分が何者なのかを、きちんとした媒体で知ってもらおう、と。
これまでどんな指導をしてきたのか。受験算数をどう捉え、どう教えているのか。長年、教室で培ってきたものを一冊に凝縮する。
もちろん、単なる自己紹介ではありません。読んでくださる方に、きちんと価値のあるものを届ける。そこは最初から変わっていません。
生徒で教室いっぱいの集団授業が好きだった講師が、いまオンラインで1対1を教えている

渡辺なおやー大手塾時代は、集団指導だったのでしょうか?
はい。集団授業しかやったことがありませんでした。しかも当時は、個別指導は自分には少し窮屈なんじゃないかと思っていたんです。
僕自身、子どもの頃からずっと集団授業で育ってきましたし、振り返ってみても、不思議と記憶に残っている授業は、集団の中で受けたものが多いんです。
もちろん、いい教材といい先生がいることが大前提です。でも、誰かの発言から気づいたり、周りが「なるほど」となった瞬間に自分も腑に落ちたりする。一人で学ぶのとは違う、集団だからこそ生まれる学びがあると思っていました。
だから僕も、大人数の授業が好きだったんですね。
ただ、授業は先生の独演会ではありません。先生だけが気持ちよくしゃべって、生徒が置いていかれたら本末転倒です。
30人、40人いても、一人ひとりが考えて、反応して、授業に入ってくる。教室全体で一つの空気をつくっていく。
その空気をつくることに、集団授業ならではの面白さを感じていました。
だから当時は、個別で一人の生徒とじっくり向き合うよりも、大人数の生徒を巻き込みながら授業をつくっていくことに、自分は向いていると思っていたんです。
渡辺なおやー現在のリモート個別指導は、どのように進めているのですか?
Zoomを使って、1対1で行っています。いまはタブレットの画面を共有して、そこに僕が書き込みながら進める形です。生徒の表情も見えますし、書いたものは授業後すぐにPDFで渡せます。
以前は、黒板やホワイトボードを使っていました。でも、やめました。
書くことは大事です。書くことで理解できることもある。ただ、僕は板書も話すのも少し速いので、生徒によっては「理解する」より「写す」ことに必死になってしまうんです。
それは違うな、と。
授業は、ノートを完成させる時間じゃない。頭を動かす時間。
板書を写すための時間を、考えるための時間をより多くした方がいい。
いまのスタイルにした一番の理由は、そこですね。
渡辺なおやータブレット上で、生徒さんも書き込めるのでしょうか?
できます。むしろ、そこはかなり大事です。
タブレットに慣れている生徒なら、その場で問題を解いてもらいます。僕はそれを見ながら、画面上で添削していきます。
それができない子には、スマホや別のタブレットからもZoomに入ってもらい、できるだけ手元を見せてもらいます。
そうすると、僕の顔、生徒の顔、共有画面、生徒の手元まで、全部見える。
オンラインだから見えなくていい、とは思っていないんです。
オンラインだから見えない、という状態をできるだけつくらない。
そこはかなり意識しています。

合否を分けるのは「基礎の徹底」と「継続」

渡辺なおやー31年で5,200名以上を指導されてきた中で、伸びる生徒に共通点はありますか?
一にも二にも、基礎の徹底です。
これはトップレベルの学校を目指す子でも、中堅校を目指す子でも変わりません。土台が弱いまま先へ進んでも、どこかで必ず伸びが止まります。
もう一つは、継続できること。
「最低3回はやってね」と言った問題を、本当に3回やる子と、1回で終わる子がいる。当然、差がつきます。
入試で強いのは、難問が解ける子だけじゃない。知っていること、できることを、確実に点にできる子です。
前半の計算や基本問題を落として、後半の難問で取り返す。そんな受験はやっぱり苦しい。
結局、計算力と基礎・基本がしっかりしていて、それを繰り返せる子が伸びる。
31年見てきて、そこは変わらないですね。
渡辺なおやー中学受験の「基礎」とは、具体的にどこを指すのでしょうか?
わかりやすく言えば、計算力と、塾のテキストに出てくる例題です。
例題があって、そのあとに練習問題や応用問題がある。まずは、その例題をきっちり理解して解けることです。
よく保護者の方から、「例題は解けるんです。でも応用問題になると解けません」と相談されます。
でも、僕はそこで一度疑います。
本当に、その例題を理解して解けているのかな、と。
解き方を覚えているだけなら、文章や数字だけでなく、切り口を少し変えられた途端に解けなくなる。それは、まだ基礎が身についているとは言えない。
応用や発展問題というのは、何かまったく別のものではないんです。結局は、いくつかの基本が組み合わさっているだけです。
その組み合わせを紐解けるかどうかも、結局は基本をどこまで理解しているかなんです。
応用力の正体も、やっぱり基礎なんです。
渡辺なおやー基本問題の解き方にも、差が出るのでしょうか?
出ます。かなり出ます。
基本問題を一問ずつバラバラに覚えているだけだと、少し形を変えられたところで止まってしまう。
大事なのは、基本を「点」で覚えるだけでなく、「線」でつなげる理解です。
「何が同じで、どこが違うのか」。そこまで考えながら解いている子は強いです。
例えば、語呂合わせもそうですよね。バラバラに覚えるより、つなげたほうが頭に残る。
ただし、その前に「点」の徹底理解や覚えるべきことは必要です。
そのうえで基本同士がつながってくると、初めて見る問題にも対応できるようになります。
渡辺なおやーそれは、予習より復習が大事ということでしょうか
基本を身につける段階では、やはり復習が大事です。だから、どの学年も原則、復習です。
ただ、6年生は少し変わります。6年生になれば一通りのことは習い終えていますから、予習(演習)▶︎復習ですね。
まずは自分で問題にアタックしてみる。
「これは解けた。でも、これは解けなかった」。その差がどこにあるのかを自分で考える。
小学生には少し高度な要求かもしれませんが、ここまでできると強いです。
渡辺なおやー基礎の大切さは、保護者の方に伝わりにくい部分もありそうです
そうですね。ご自身がそういう勉強をしてこられた保護者の方には、経験があるぶん、すぐにわかっていただけます。一方で、そうでない場合は、なかなか実感しにくい部分だと思います。
「基本はある程度できているから、もっと難しい問題をやらせたい」。その気持ちもわかります。
でも、「ある程度」ではダメなんです。弱い土台の上に、いくら積み上げようとしても、限界が来ます。
しかも、中学受験には「時間切れ」があります。
大学受験と違って浪人はできません。残り時間が少なくなってから「基礎からやり直そう」と思っても、現実にはそこまで戻れない。
そうなると、とにかく問題を解くしかない、というパワープレイになってしまいます。
だからこそ、基礎は早いうちに固めておく。
結局、最後に強いのは、基礎がきっちりできている子なんです。
塾選びで見るべきは「授業を見せてくれるか」

渡辺なおやー塾や先生を選ぶとき、保護者は何を基準にすればいいでしょうか?
僕は、親には見えないことを、きちんと伝えてくれる先生かどうかだと思います。
子どもが塾にいるとき、どんな様子なのか。どこでつまずいているのか。今は大丈夫でも、このままいくとどこが危ないのか。
そういうことって、保護者にはなかなか見えません。
だから、良いことだけではなく、気になることや危険なサインも早めに伝えてくれる。そして、「ここはご家庭でも少し見てください」「ここから一緒に立て直していきましょう」と考えてくれる。
僕は、先生と保護者が二人三脚で子どもを見ていくことが大事だと思っています。
耳の痛い話をすることもあります。でも、厳しいことを言うのが目的ではありません。
問題が小さいうちに気づいて、手を打つ。そのために伝えるんです。
そういう先生を選んだほうがいいと思います。
渡辺なおやーほかに、見極めるポイントはありますか?
もう一つは、授業を見せてもらえるかどうかです。
「保護者は授業が見られません」「教室には入れません」という塾がほとんどです。でも僕が親なら、子どもがどんな授業を受けているのかは知りたい。
僕はリモートで個別指導もしていますが、授業はどんどん見てもらって構いません。生徒の横に座っていただいてもいい。ただ、それで子どもが緊張したり萎縮したりするようなら、「少し離れて見てください」とは言いますけど。
授業は商品です。モノとして残りにくい。
だからこそ、どんな教え方をしているのか。子どもがどう反応しているのか。実際の授業を見て判断するのが一番だと思います。
見せてもらえるのであれば、一度見てみる。
塾の名前や合格実績だけではなく、「自分の子どもが、そこでどんな授業を受けているのか」を見る。
先生や塾を選ぶうえでは、そこも大事なポイントだと思います。
渡辺なおやー授業の質は、塾側でチェックされているものなのでしょうか?
塾によると思います。
僕がメインで力をつけさせてもらった浜学園には、授業の質をチェックする仕組みがありました。
保護者の方が、いつ後ろから授業を見に来られるかわからない。授業そのものも定期的にチェックされて、評価が下がればギャラにも反映される。かなりシビアでしたね。
でも、僕はそれでいいと思うんです。
授業も一つの商品です。だったら、当然、品質管理が必要なはずです。
教室には基本的に先生と生徒しかいません。特に低学年のクラスなら、先生が間違ったことを言ってたりおかしなことをしていても、子どもがそれを指摘するのは難しい。
だからこそ、第三者の目が入ることには意味があると思います。
誰に見られても変わらない授業をする。塾側も、その質をきちんとチェックする。
自分が親だったら、安心して子どもを任せられるか。
僕は結局、そこが一つの基準だと思っています。
渡辺なおやーノートやテキストのチェックも、見るべきポイントでしょうか?
そうですね。宿題や課題、演習した答案など、子どもが書いてきたもの(ノートなど)を、きちんと見てくれているかどうか。これは大事だと思います。
日付を書いて、最後のページだけ見て判子を押す。それだけでは、僕は「見た」ことにはならないと思っています。
どこを間違えたのか。どこでつまずいているのか。前と同じミスをしていないか。
ノートや答案には、その子の今の状態が出ます。
だから、きちんと全体に目を通して、その生徒の状況を把握しておく。それも担当講師の仕事だと思っています。
もし「ちゃんと見てもらえていないな」と感じるのであれば、保護者の方から先生や塾に伝えても、まったくおかしくないと思います。
渡辺なおやー実際に見学を申し込んだとき、その日だけ整えた授業かどうかはわかるものですか?
ある程度はわかると思います。
保護者が来ているからその日だけそうしているのか、いつもの授業なのか。見ていると、意外と伝わってくるものです。
僕はこの業界に長くいますから、どうしても少し疑って見てしまいますけど(笑)。
ただ、「授業を見せてもらえますか」と聞いて、「いいですよ」と普通に受けてくれる。それだけで、まずは一つのハードルはクリアしていると思います。
あとは、先生だけではなく、子どもたちの様子も見る。
自然に授業に入っているか。先生とのやり取りはどうか。そういうところに、いつもの教室の姿は出ると思います。
【新刊】『中学入試 はじめの一冊 ぜんぶマンガでわかる算数』(KADOKAWA・全3冊)



(出典:KADOKAWA)
渡辺なおやー9月16日発売の新刊について教えてください
小学3〜4年生を中心とした、低学年向けの算数マンガです。算数が得意な子なら、1〜2年生でも楽しめると思います。
これから「中学受験をやってみようかな」「塾に行ってみようかな」という子はもちろん、すでに塾に通っているけれど、算数に少し苦手意識がある子にも読んでほしいですね。
いきなり難しい問題を解くのではなく、まずマンガで「算数ってこういうことか」「これならわかる」と感じてもらう。
算数へのハードルを下げて、最初の一歩を踏み出してもらうための「はじめの一冊」です。
今回、KADOKAWAさんからお話をいただき、僕が監修を担当しました。
渡辺なおやー制作はどのように進めたのですか
僕は監修という立場ですが、算数部分の土台はすべて僕が書いています。
問題も、答えも、解き方のプロセスも僕がつくる。それをもとに漫画家さんがネームに起こして、マンガとして形にしていく、という流れです。
マンガにするという企画自体は、僕から提案したものではなく、最初からKADOKAWAさんからいただいたオーダーでした。
そこから、編集者さん、漫画家さん、僕の3者で何度も原稿を往復させながら仕上げていきました。
完成まで、だいたい2年ですね。
渡辺なおやーどんなところを見てほしいですか?
すべてですね(笑)。
個人的には、低学年向けだからといって、言葉や考え方に遠慮していないところでしょうか。
低学年向けの本というと、どうしても内容をやさしくしすぎることがあります。でも、この本はそこを必要以上に下げていません。子どもだからといって、子ども扱いしすぎない。そこは意識しています。中学受験が目標ですから。
『数と計算』『図形』『文章題』の3冊がありますが、順番に読んでもいいですし、気になる一冊から入ってもらっても構いません。
3冊それぞれキャラクターも、マンガの雰囲気も違います。その違いも楽しんでもらえたらと思います。
それから、漫画家さん渾身のダジャレやギャグも満載です(笑)。
なんとか子どもたちをクスッとさせようという、漫画家さんの血の滲むような努力が、随所に感じられます。
でも、笑って読んでいるうちに、ちゃんと算数が頭に入ってくる。
そこが、この本の一番のセールスポイントかもしれません。
『中学入試 はじめの一冊 ぜんぶマンガでわかる算数』
(数と計算/図形/文章題・全3冊)は、2026年9月16日にKADOKAWAより発売。
受験Labでは、算数のweb講座、リモート個別指導、保護者向けの受験コンサルティングを行っています。


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