「進路で人生は決まらない」若者の自信を育てるキャリア教育コーディネーター・りんごさんの挑戦

キャリア教育コーディネーター SDGs実践

社会活動の具体例として紹介したい方がいます。

お名前はりんごさんで、キャリア教育コーディネーターとして、一般社団法人でご活躍されています。

渡辺なおや

りんごさんは「原体験がきっかけだった」と語ります。

では、キャリア教育の現場で、社会的意義と事業の継続(持続可能性)をどう両立しているのか。具体的な仕事内容や工夫、葛藤まで含めて深掘りします。読み終えた頃には、「働く」と「社会に役立つ」の距離感が、少し変わるかもしれません。

目次

キャリア教育コーディネーターという仕事とは

キャリア教育コーディネーター SDGs実践①
(左:りんごさん 右:渡辺なおや)
渡辺なおや

ーりんごさんの職業『キャリア教育コーディネーター』について教えていただけますか?

私はキャリア教育コーディネーターという仕事をしています。おそらく聞き慣れない仕事だと思いますが、社会と学校を繋げて、生徒たちにとって学びとか成長となるような場を作っていく、場作りをしていくお仕事になります。

メインでしているお仕事としては、主に高校生のインターンシップのコーディネートという仕事をしています。もう1つは通信高校の生徒向けのサードプレイスの運用も担当しています。

私は、国家資格であるキャリアコンサルタントの資格を持っております。キャリアっていう言葉の定義としては、人生全般が含まれています。自分の人生をどうやって生き抜いていけばいいか、そういった力を育むのがキャリア教育の分野になります。

渡辺なおや

ー具体的にはどのようなものがキャリア教育になりますか?

具体的には自分自身への理解を深めるところや、人間関係を形成できる能力、周りの人とどうやってうまくやっていくかの能力とか、課題対応能力などです。困難にぶち当たった時に、どうやってそれを乗り越えていくかもキャリア教育の分野です。

あとは、キャリアプランニング能力という、自分の目標を設定した時に「その目標に到達するにはどういう風に計画を立てたらいいのか」っていうのを自分で考えて、それを主体的に行動に移してくみたいな。

この4つの能力をキャリア教育では重視しており、キャリア教育を促進する立場として今関わらせていただいています。

インターンシップ先を「誰でもいい」にしない理由

キャリア教育コーディネーター SDGs実践②
渡辺なおや

ー今まで大切にしてきた考え方は何でしょうか?

私が大切にしている考え方は、生徒たちが自分に自信を持っていくきっかけ作りができたらいいなと思っています。なんでそこを意識しているかというと、私自身が10代の時に、結構自分に自信を持てずに来てしまった、苦しい思いをしてきたところがありました

10代のうちに自分に自信を持てるきっかけがもしあったなら、もっとチャレンジもしていけただろうし、他の人とも積極的に関わることができただろうなと思っています。

自分のできなかったところを、子どもたちにサポートできるような支援ができたらと思って、ずっと大切にしてきています。私の場合、インターンシップのコーディネートが主な仕事ですが、生徒の目線で見ることを大切にしています。

どういう場作りをしていくと、生徒たちにとってより学びになるのかはすごく意識していいます。そういう目線で考えた時に、インターンシップの受け入れ先の事業者さんを、新規で開拓するときも、大切にしていること2つあります。

1つは、その人を育てる意識を持っている事業者さんなのかもう1つが、事業所の社員の方や担当者の方が、自分の仕事にやりがいを持てているか、生き生きしてるか、この2つは必ず確認するようにしています。

生徒たちにとってインターンシップは学校の先生でもなく、自分の家族でもない、新しい大人に出会っていく非常に貴重な場になります。そこでどういう人たちに出会っていけるかが、生徒たちにとってすごく重要になると思っています。

せっかく出会った大人が、自分の仕事に対してやりがいがなかったりすると、マイナスの影響を受けてしまいますし、人を育てる視点もあまり持っていない。

高校生のように10代のうちは未熟なところもあるので、そういったところも管理した上で、受け入れて育ててくださるような姿勢がない事業者さんだと、生徒たちも苦しい思いをしてしまうと思うので、その2つは、しっかりヒアリングをしています。

渡辺なおや

ーでは、インターシップ先として断ることもございましたか?

はい。なので、やっぱりできる限り対面でお会いするっていうのをすごく大切にしています。今、リモートでミーティングもできるとは思いますが、あえて対面でお会いすることで、その方の人となりが理解できます。

そこの事業者の雰囲気が見れたり、色々感じ取れるものが多いので、できる限りお会いして、そこの2つを確認しています。だからこそ、ここだったら安心して送り出せるなっていうところを、私たちの方で判断した上でお願いをしています。

訪問してあんまり良くないなって思った事業者さんに関しては、お断りもさせていただくことはありますね。

インターンシップが生む、目に見える変化

キャリア教育コーディネーター SDGs実践③
渡辺なおや

ーインターンシップを通じて、生徒たちにどのような変化がありますか?

そうですね、新たな自分の興味への気づきや、自分の苦手意識から抜け出すきっかけになっています。実際の生徒の例なんですけど、希望していた業界とは違うインターンシップマッチングしてしまった女子生徒がいまして。

出来る限り希望には沿っているんですけど、どうしてもうまくマッチングできない生徒が実際出てきてしまうことがあります。なので、自分の希望の業界ではなかった訳で、すごいモチベーションが低かったんですね

ただ、モチベーションは低かったんですが、実際にその会社でインターンシップに参加して課題を出されたんですね。ものづくり系の会社なんですけど、他の人から見た時に、どういうふうに感じるのかっていう、他の人の目線で考えて欲しい

考えた上で、ものを作ってほしいっていう課題を出されたんですね。その女子生徒は、他の人が見た時の視点を考えることが、非常に面白かったらしくてですね、そこに面白みを感じた自分自身にすごい驚いたと言っていました。

「私、こんなに興味があるんだ」っていうところに驚いていて、すごい嬉しそうだったので、自分の興味が新たに見つけられたっていうところと、自分の苦手という思い込みから、脱却できたっていうところも彼女は掴んでいて。

個別に授業の中で話をした時に、途中でぽろっと言ってくれたのが「私、あんまり自分の気づいたこととか、学んだこととか、自分の意見っていうのを他の人に話すのが苦手なんですよね」っていうのを打ち明けてくれて。

「だからこうやってお話を色々してるんですけど、私の話わかりますか」って言われたんですよね。ただ、話してて思ったのですが、彼女は確かにちょっと話すのが苦手そうな感じで顔を赤らめながら話してる様子とかもありました。

キャリア教育コーディネーター SDGs実践⑥

言葉に詰まる様子とかも確かにあったんですけど、それを気にさせないぐらい、表情が豊かだったり、身振り手振りっていうのをしっかりしながら、一生懸命お話をしてくれたので、すごい伝わってくるものがあってですね。

「自分ではうまく自分の意見とか、こういう話をするのが苦手っていう意識があるみたいだけど、実はそんなことないんじゃない」っていう風に声をかけたんですよね。

人間って、言葉で全部うまく伝えられなかったとしても、言葉以外の表情だったり、身振り手振りっていう部分でも、総合的に伝えられたら、それで大丈夫なんだよって、もっと自信持っていいんじゃない。

っていう風に声をかけたらですね、その女子生徒、すごいハッとした顔をしてですね。「そっか」みたいな、苦手って思ってたけど、意外と自分はできるんだなみたいな、気づきがあってですね。

私とその振り返りの授業の中で会ったっていうのも、社会との繋がり。私はその学校の人間ではなく、初めて出会う大人、インターンシップ先の事業者と同じポジションというか、生徒から見たら、やっぱ新しく出会う、社会で出会う1つの場面だったと思います。

そういったところで、社会と新しい大人と繋がって、変化が生まれる場面っていうのは多いかなっていう風に感じました。

SDGsという言葉を使わずに表すなら、どんな社会課題か

キャリア教育コーディネーター SDGs実践④
渡辺なおや

ーりんごさんのお仕事をSDGsを使わずに説明するとどうなりますか?

私が向き合っている社会課題を言葉として言えるとしたら、日本の若者が他の国々に比べて、精神的に、社会的自立が遅れているところで、社会課題に向き合っているお仕事なのかなという風に感じております。

なぜそれが言えるかというと、日本財団で18歳意識調査っていうアンケートを実施してまして、日本だけではなく他の国々の18歳の子に意識調査をしているアンケートになります。

その中で日本が顕著に出ている傾向は、日本の若者が自分を大人だと思うって答えた18歳が、30%以下っていうところで、他の国よりも著しく低いという結果がでています。

あとは、自分が自分で国や社会を変えられると思うかっていうアンケートの問いに対して、変えられると思うって答えた18歳が日本だと20%以下っていうのがあって、これも他国に比べると非常に少ないんですね。

18歳というと、日本で結婚ができる年齢でもありますし、年齢だけで見たらもう大人と見なされてもいい年齢です。18歳の生徒たち自身の意識としては、力を持ってるかどうかっていうところで、持ってないって思ってしまっているところがあると思います。

それは少子高齢化が進んでいる中で、1人1人の若者が自分の力を発揮していけるのがすごく重要だと思います。そこが私たちが向き合っている社会課題なのかなと思います。

まとめ|「自信を育てる場」を社会に増やすために

キャリア教育コーディネーター SDGs実践⑤
渡辺なおや

ーでは「自信を育てる」ためにどう生徒たちと向き合いますか?

私が高校生の子たちと接するときは、大人ぶらないというか、できるだけカジュアルに接するっていうのを心掛けてます。というのも、高校生から見ると大人ってちょっと怖い存在だと思いますし、なんか気軽に色々話していいんだろうかと迷うと思います。

高校生と話をする時に敬語を使わない、タメ口で話すっていうのをまずやってます。あと、子どもたち、生徒たちってすごく不安に思ってることがたくさんあると思うんですけど、大人も実は色々不安なんだよっていうのを、包み隠さず伝えるようにしています

高校生と比べると色々長けてるところの方が多いのかなみたいな印象に見えると思うんですけど、実は大人になっても色々葛藤することがあるんだよ。ただ、大人になると、葛藤しても、頑張らなきゃいけないところはなんとか乗り越えているだけであって。

葛藤しているのは変わらないんだよっていうのを伝えることで、結構生徒たちはほっとするんですよね。大人でも新しい場所に行くと緊張するんだなとか、そこで親近感を持ってもらって、正直な思いとかを話してくれるところとかもあります。

渡辺なおや

ー将来や進路に悩む高校生に向けて、今だから伝えたいメッセージをお願いできますか。

私自身、結婚もしてますし、子どもがいる身なんですけども、自分が高校生の時って、目の前の進路選択って、その後の人生を全部決めてしまうみたいな思い込みが結構あったなって振り返ると思います。

ただ、今の時代、人生100年時代とかも言われますし、その時々でやっぱり何を優先するかの価値観が変わってきたり、結婚とか出産とかもすると、働き方が変わったり、なんかそういうこともすごくたくさんあります。

その中で、目の前の進路選択で何を選んだかだけで、人生って全て決まってしまうわけじゃないんだよっていうのを伝えたいなって思いますね。10代の時には想像できないと思うんですけど。

高校生も20代になるし、30代、40代、50代って続いていくのですが、そこらへんって高校生の時にはあんまりイメージできないと思うんですよね。ただ、人生が長く続いていく中で、その年代ごとに色々思うことの違いとかも出てきます。

自分たちが思うよりも人生って長く続いていくものなので、目の前の選択で全部が決まってしまうわけではないんだよっていうことは、お伝えできるところなのかなと思います。

そうやって長いスパンで少し考えられると、そこだけで人生が決まるわけじゃないって思えると、少し気持ちが楽になる部分とかもあると思います。私は10代のときに、そういう風に思えなかったので、10代の生徒たちに知っておいてほしいと思います。

本記事は、教育関係者・保護者・塾運営者などへの取材をもとに構成した一次情報コンテンツです。
内容の引用・転載については、サイトポリシーをご確認のうえ、出典を明記してご利用ください。

コメント

コメントする

目次