「勉強キライも、勉強好きも」個別指導学院ヒーローズ富塚校・鈴木智大先生に教室づくりを聞いてみた

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー

勉強があまり好きではない。部活や推しごとで毎日いっぱい。そういう子に合う塾は、意外と見つかりません。

静岡県浜松市富塚町の個別指導学院ヒーローズ富塚校は、「勉強キライも、勉強好きも。みんなのサードプレイス」を掲げる教室です。教室長の鈴木智大先生は「教育クリエイター」を名乗り、Instagramなどでは全国3.5万人にリーチする発信を続けています。

どんな子が通い、1コマで何が起きているのか。ゼロ塾ガイドは、鈴木智大先生に独自に取材しました。

目次

通っているのは「イベントガチ勢」と「部活ガチ勢」

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー①
渡辺なおや

ー富塚校に来られる生徒さんに、共通点はありますか

イベントガチ勢と部活ガチ勢が多いです(笑)。推しのために遠征する、みたいな子も多いですね。

渡辺なおや

ーそういう子に向けて、教室の色を出されたのでしょうか

都心に比べれば少ないと思うんですけど、この地域って塾が多いんですよ。隣も塾だし、正面にも塾があるし、横にも何個か塾がある。

どの塾さんも、それぞれの理念に沿って子どもの成長を考えてはいると思うんです。ただ、そんな中で、どちらかというと勉強があんまり好きじゃない子とか、勉強は好きだけどずっと勉強しているのは好きじゃない子。

そういう子が通ってもいいような塾って、意外とないなと思って。そう考えた結果が、今の形です。

勉強でも、それ以外のことでも、「ここなら通ってもいいな」と思える場所づくりの方向に開拓していきました。

渡辺なおや

ー合う・合わないは、はっきりしそうですね

そうですね。だから最初の面談とかでも、合う人にはとことん合うと思うけど、合わない人には全く合わないと思いますって、正直に言っちゃう時があります。

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー②

1コマの中身は、教えることより「承認と称賛」

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー③
渡辺なおや

ー1コマの指導は、どのように進むのでしょうか

まず、その日のゴールを生徒自身に決めてもらいます

学期ごとの目標をみんなに持ってもらっていて、その目標に向かって、今日は何をやるのか、今日のゴールはどこなのかを最初に決めてもらう。生徒一人ひとりにカリキュラムを作っているので、その子その子の目標や課題に対して指導していく形になります。

形態としては、個別指導の中でも巡回型ですね。講師1人に対して生徒が最大6人くらいまで。その中を回りながら進めていきます。

渡辺なおや

ー教える以外に、意識されていることはありますか

教えることもするんですけど、教えるよりもまず、承認してあげる。「承認と称賛」と言っているんですけど、その辺をしてあげることの方が多いですね。

できているのに自信がないから、「できていない」と言うんですよ。完璧じゃないとダメだと思っているから、1個間違えただけで「自分はダメだ」と言う。そんなことはないんですけど、本人がそう意識しちゃっている子が多い。

だからまず、その子が持っている勉強へのマイナスの気持ちをほぐしていくところからですね。

教えるのも、授業的に教えるんじゃなくて、生徒の疑問とか悩んでいることをほぐしてあげる感じです。「わからない」と子どもは言うけど、どこがわからないかって人によって全然違うじゃないですか。そこを見て、先生たちが解きほぐしていく。

渡辺なおや

ー講師の方には、何をお願いされていますか

主役は生徒」ということは、以前から面談でお伝えしていました。今年からは講師にも、生徒を輝かせるための「キャスト」という表現を使って、その考えをしっかり共有するようにしています

僕、ディズニーが好きなんですよ。パークのスタッフってキャストって言うじゃないですか。その世界に遊びに来た人のために、世界観を壊さないように振る舞ったり、来た人が楽しめるように動いたりする。

勉強もそうなったら面白いと思いませんか。先生たちが盛り上げてくれるとか、めっちゃ褒めてくれるとか、認めてくれるとか。

「勉強しなさい」を、行動に置き換える

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー④
渡辺なおや

ーつい「勉強しなさい」と言ってしまうご家庭に、伝えたいことはありますか

目の前に岩があって、それをどかしたいとなった時に、どういう方法がありますかって、一度考えてみてほしいんです。

「勉強しなさい」だけだと、岩を筋トレで解決しようとしているようなものなんですよ。自分を鍛えて岩を動かそうとしている。

「勉強」と言っているとでかいけど、「岩を動かす」だったら、細かく砕くとか、てこを使うとか、道具を使うとか、いろんな方法が出てくるじゃないですか。

じゃあその中で手頃にできそうなものを、保護者の方から「一緒にやってみようか」と声をかけられれば、多分全然違うと思うんです。

渡辺なおや

ーやる気を出させる、という方向ではないのですね

やる気って感情じゃないですか。自分でコントロールできるのは「どう考えるか」と「どう行動するか」の2つだけなんですよ。

だったら、やる気という、出ればいいんだけどどうやったら出るのかわからないものに期待するんじゃなくて、行動の単位をとにかく小さくして、やれるところから少しずつやれるようにする。そうすれば、自然とやれるようになるんじゃないかと思って。

「頑張る」だけだと何をどうすればいいのかさっぱりわからない。「テストの点数を上げる」も、よく言うけど、あれって「売上を上げる」くらいの粒度ですよね。極端なところだと、「とりあえずやってみな」の一歩手前まで細かくする感じです。

「私、記憶力がないんです」から生まれたミュージックビデオ

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー⑤
個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー⑥
個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー⑦
渡辺なおや

ー生徒さんの質問をミュージックビデオにされたきっかけは何でしょうか

去年、教科書とか参考書の内容が全く頭に入らない、という女の子がいたんです。授業動画も、自分には音にしか聞こえない。だから「私には記憶力がない」と言っていて。

でも、その子はあるアイドルグループのファンで、新曲が出たら歌詞もダンスも、次の日にはほぼ全部覚えているくらいだったんですよ。

あれ、記憶力がないって言ってたじゃん、と。そこから、歌だったら覚えられるんだなと思って。ちょうどその時に、自分の手で歌を作れるAIが出たなと思い出して、去年の夏休みに作り始めたのがきっかけです。

渡辺なおや

ー最初から今の形だったのですか

いや、最初は「語呂合わせのリズムがいい版」みたいな感じだったんです。

けど、作ってみたら、きっかけになったその子に「違う」って言われたんですね。違う違う、そうじゃないんだ、求めているのはそれじゃないと。

塾が、教える人が、説明を歌に乗せて作りましたみたいなものじゃなくて、普通にJ-POPとして流れてくるものじゃないとダメだと。説明なんかもう見ない、と言われたんです。だったら説明はしない、ただただエンタメとして振り切ろう、となりました。

渡辺なおや

ーなぜ、そこまで振り切ったのでしょうか

できる子って、YouTubeとかで動画を調べられるんです。わかりやすい先生の動画もいっぱいあるじゃないですか。

だけど、そこまで手が届かない子になると、ほぼ調べないんですね。SNSは見るけど。そういう子たちの目に留まるような形にしてほしい、というのが、その子からのお願いだったんです。

彼女にとっては、歌っていないというただそれだけで、頭に入らない。それだけのことなんですよ。

塾を「いてもいい場所」として捉え直す

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー⑧
渡辺なおや

ー「みんなのサードプレイス」とは、どういう場所でしょうか

教えるという機能に振り切って、塾としての機能をガチガチに詰めていくと、最終的に全部AIに取られる気がするんですよ。勉強がわからない、今つまずいているところを教えてほしいくらいだったら、今のAIってかなり精度高くやってくれるじゃないですか。

じゃあ人間にできることは何かというと、困っているとか悩んでいるとか、そういう子に寄り添ってあげること。自分が何にどう困っているのかをうまく言葉にできない子の、その言葉にする手伝いをしてあげること。

それから、みんな基本的に完璧を目指しすぎていて、できない自分が悪いと思っているんですよ。だから「そんなことないよ」と隣で声をかけてあげられる空間。そういうものが必要になってくるんじゃないかなと思うんです。

なので塾を、勉強しに行く場所というよりは、気軽にいてもいい空間、居場所として再定義したらいいのかなと思って、サードプレイスと言っています。

個別指導学院ヒーローズ富塚校 鈴木智大 インタビュー⑨
渡辺なおや

ー今後、力を入れていきたいことを教えてください

夢や目標を、恥ずかしげもなく言えて、それを応援できる空間づくりですかね。

中学生と話す機会があると、今の子たちって「目標がない」って言うんですね。ないというか、知らないだけだと思うんですけど。しかも、目標がないことを悪いことだと思っているんですよ。将来の夢がないから自分はダメだ、と。

仕事なんていろいろあるじゃないですか。中学生が知っている世界の中にないだけの話で。中学校とか小学校とか高校の時で人生が全部決まるわけじゃないんだから、世の中のいろんなことに目を向けられるようにしてあげたいなとは思っています。

方法はその時その時で、あの手この手で変えられるけど、根本を変えちゃうとブレブレになっちゃいません?いろいろ模索中ではあるんですけど、根本のところはブラさないようにしよう、というのがいいのかなと思っています。

本記事は、教育関係者・保護者・塾運営者などへの取材をもとに構成した一次情報コンテンツです。
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