DIYのいえは、大阪府堺市・泉北ニュータウンを拠点に、地域に根ざした住まいのサポートを行うDIY工房・住まいづくりのブランドです。
堺市公式のSDGsプラットフォームに登録されている団体へのインタビューを実施しました。
今回お話を伺ったのは、その「DIYのいえ」を運営する代表・中島さん。
シニア男性や子どもたちに向けて、「居場所をつくる活動をしたい」と語ります。
では、具体的にはどのような取り組みが行われているのでしょうか?
等身大の想いと実践から生まれた活動の数々を、じっくりと深掘りしていきます。
本記事は、大阪府堺市の「さかいSDGs推進プラットフォーム」キャンペーンの一環として、賛同団体である「DIYのいえ」への独自取材をもとに構成しています。
“DIYのいえ”が生まれた理由
ーまず「DIYのいえ」を立ち上げた経緯を教えてください
高校卒業後、実家の仕事に関係する、建築の専門学校へ進みました。夜間の学校に通いながら昼間はアルバイトをして、他の会社でも経験を積んだあと、父の会社に入社し、気づけば30年以上になります。
普段はリフォームが多いですね。あと、不動産の仲介とかの仕事も並行しています。父から継いだ会社の状態が芳しく無く、何か他社との差別化とかを図っていかないと思い、立ち上げました。
DIYのいえというのは、元々弊社で名付けたブランド名です。立ち上げた頃でも、ネットでは他社様の、綺麗なホームページがどこもかしこも出されてましたので、そのような形で弊社が戦っていくのは無理だろうなと思いました。
ちょうどDIY女子とかいうのが流行っていましたので、事業として考えられるんじゃないかなと思いました。
うちの会社自体が、修理修繕・無料っていうサービスをお客様にしてましたので、私自身も元々ある程度のDIYはできました。そのため、ちょっとしたサービスとして提供しているのではなく、自信をもって提供していけるという点もあります。
(左:中島久仁さま 右:渡辺なおや)
ただ、DIYのいえという名前をつけて、そこからどうしようかとなりましたね。なかなかお金もないですから、そんなに宣伝打っていくこともできないですし。DIYで儲かるというのもなかなかないわけですから、何かの宣伝活動になれることがないか模索しました。
DIYのいえという名前をつけて活動し始めてから、1年半後に堺市がコミュニティビジネスに取り組んでいる会社を支援します、という募集がありましてね。
泉北ニュータウンで、人口流出がずっと起きていることを知っていましたので、活性化するために空き家をDIYで改装したいと申し出ました。日曜大工等が好きなシニア男性を集めて空き家を改装し、若い人を呼び込もうっていう計画を堺市に提出しました。
時間のあるシニア男性を集めて、DIYを楽しんでもらいながら空き家を改装し、若い人がそこに住むものを地域のシニア男性たちが創り上げる形にすると、コストもそんなにかからずに、町のことを考えた人が集まりますよね。
そういった形で、他地域から泉北ニュータウンに移り住む人が、泉北ニュータウンの人と知り合える、また泉北ニュータウンにいるDIYという共通の趣味を持ったシニア男性同士が、知り合いになれるというのはいいんじゃないかっていうような話で、言ったのが始まりです。
ー他社とは違う価値を作ることにどのような背景がありましたか
堺市から許可をもらったので、物件を探したのですが、改装して若い人に貸し出すという許可をもらえる空き家がみつからなかったんです。急にそんなことやり始めると言ったって、大事な資産を貸すことには中々壁がありますよね。
本当にいろんな方法でアプローチを試みましたが、ダメでした。そこで、何か他の方法がないかとまた模索する日々が続きました。
その年の年末に、また堺市から大企業とコラボして、シニアビジネスを考えられませんかっていうアイデアソンがありましてね。そこへ応募しました。
私がいま54歳で、泉北ニュータウンを営業活動で回っていた20代のころの話ですが、その頃は泉北ニュータウンのお客様も、若いわけで現役でお仕事されている年齢です。
私よりも、20歳かもうちょっと上っていうような方が多いと思うんですけど、当然私が年をとるとお客様も年をとるわけです。
お客様がお仕事を退職される時期になり、セカンドライフの状態になってくると、張りがなくなって非常に家の中におられることが多いみたいです。結果としてあまりいい話になってないお客様を、見ることが多かったんです。
なかなか社会との触れ合いがなくなってるっていうのが、原因の1つだなと思いました。そこで、自分に余裕もないくせに何かできることはないかなというのは、事業計画とは全く別のところで頭の中にありました。
シニアビジネスをっていうような話の中で、大阪府の住宅供給公社さんと、泉北高速鉄道さんと2社に対してプレゼンを提出しました。空き家や空き室をシニア男性を集めて改装して、若い人たちが利用する場所づくりをしたいという内容です。ですが、それは通りませんでした。
(左:中島久仁さま 右:渡辺なおや)
こちらが思い描いていたものは通らなかったんです。ですが、その当時大阪府の住宅供給公社さんも、団地の活性化と若い人を引き込みたいっていう理由で、DIY賃貸っていうのを始めておられたんです。
DIY賃貸っていうのは借りる部屋を自分で改装していいよと。また出ていく時も、ルール通りやってたら原状回復しなくていいですよっていう条件です。それで、若い人に入ってもらおうと広くすすめておられました。
けど、なかなか盛り上がらないというお話だったので、何か拠点を作ったらいいんじゃないかということをお考えになられたらしいんです。それにあたって、協力してもらえますか。みたいなお話をいただきまして。
私どもの本業はリフォーム事業と不動産仲介業でして、賃貸住宅での協力というのは正直なところ悩みました。
しかし弊社のような小さな会社が、そういう大きい会社と取り組めるというのは通常ありえない話です。簡単には来ない話だと思い、半分は宣伝だという風に考えて社会活動的に取り組み始めたって形です。
“誰も来なかった”2か月を乗り越えて
ー 団地以外の「外部開放」という条件を出された理由とは
団地内で拠点となるDIY工房を始めると、協力相手は大きい会社です。すると、プレスリリースを打ってくださるわけです。初日はものすごい人に来ていただきました。ですが、そのあと2ヶ月ぐらいは誰も来ないという状態でした。
団地の中でやってるわけですから、中々人も集まらない訳です。団地って開放的な場所でないので、外部から人が簡単に入ってくるっていうようなイメージはないんですよね。
ある程度そのことは予測していたので、始める時に団地外の人が、絶対自由に使っていいっていう条件だけはお願いしてたんです。予測していた以上に人は来なかったのですが。
それだけは、住宅供給公社さんにのんでほしいとお願いをしました。徐々にインスタなどをやっている中で、知ってもらえてお客さまが増えてきました。遠方からでも来てもらえる状態にまでなり、最初は大変でしたけど、とても嬉しかったのを覚えています。
(左:中島久仁さま 右:渡辺なおや)
ー他にはどのようにして認知を増やしていきましたか
テレビや新聞の取材は、大阪府住宅供給公社さんの力でずっと立て続けに来ていただいてたんです。
ですが、ケーキ屋さんなら殺到するでしょうけど、DIYでは殺到はしなかったです。サポートいただくシニア男性に関しては、できるだけこの団地内でどうにか来てほしいと思っていました。
茶山台団地という場所では、いくつか取り組みをされてるところがありまして。つながりで来ていただいたりとか、遊びに来てもらう中で、こちらの思いを話して助けて頂けるようになりました。
こういう風にシニア男性が、地域と繋がる場所にしていきたいというお話をさせていただき、賛同いただいた方に今も助けていただいています。
子どもたちとシニアが自然に集うDIY工房
ー 子どもたちやシニア男性は、どのような活動をされていますか?
DIYの工房には、団地に住んでおられる子どもたちが来ることが多いですけど、普段はいきなり来ます。「刀作りたい」とかですね、棚みたいなの作りたいとか、こちらがどうこういう前に作るんです。
子どもたちが廃材を積んで保管しているところへ行って、勝手に自分で好きなもん選んで勝手に作ってるっていうような感じが多いです。その中で、こういうのができないとかいうのを相談してくるのを、シニア男性がサポートするっていう感じです。
危険なことをしてる子供達には、ちゃんと叱って教えてくださっています。夏休みは親御さんと一緒に、宿題の工作の相談に来られます。
ゆうちょさんがやっておられる貯金箱コンクールがありましてね。小学生が夏休み前に聞いてきて貯金箱を作りに来られたときの、サポートもさせてもらっています。
あとは幼稚園や、公共団体のイベントに出張してサポートすることがあります。園児がDIYのいえまで来てくれて、釘を打つ練習のサポートが主な内容です。
中島さまが考える「社会貢献」のあり方
ー中島さまが考える社会貢献のあり方を教えてください
前々から、さかいSDGs推進プラットフォームの会員であるビスタックジャパンさんには、出る廃材などを分けてもらったりしています。廃材も大きい金額では買えないですけど、タダでもらうんじゃなくて、購入するという形をさせていただいています。
購入することがこちらも売りやすいというかですね、現実的にはちょっとでもお金出す方がいいんかなっていうような考え方です。先方にはかえって御迷惑だと思うんですが、その気持ちばかりの気遣いでも、色々皆さんが遊びやすくなると思うんですよね。
この活動に賛同いただいているというか、私どもの活動を見ていただいて、助けていただけてるっていうのはありがたいです。
ー 善意と商売の“ちょうどいいバランス”について、どうお考えですか?
やっぱり皆さんに助けていただいてるからできてるんであって、この形は自分も考えながら選んできた道です。結果がでているのは、かなりの助けをいただいてるからできているなって思っています。
本当に商売でもなんでも一緒で、回り回っていい形になってたらいいなっていう想いはあります。DIYのいえに来て利用いただいて喜んでいただき、弊社のことを知ってもらい弊社の仕事にもつながる。
そしてその儲けを使い、DIYのいえを良くすることで社会に還元していくっていう風に。それが1番いいことかなっていうのは思いますね。
喜んで頂くためには、もっと楽しんでもらえる内容を考えて拡げていかないといけません。そうするには私どもももっと稼いでその分のお金を作らないといけないですし、またそれが巡回していって少しでも社会の役に立てたらなって思いますね。
(左:中島久仁さま 右:渡辺なおや)
地域や企業へ伝えたいメッセージ
ー最後に、近隣地域や企業・団体の皆さまへ、メッセージをお願いいたします
時間を持て余していながらも、地域に参加しづらいシニア男性の方々に単純に喜んでもらえたり、楽しめる場所があればいいなというのが元々の想いです。
DIY事業に取り組むことが、弊社の力になるように考えて活動してきました。結果的に商売の部分半分、社会活動的な部分が半分という形になっています。
私どもは、シニア男性に対する思いの部分でDIYという道を選んだのですが、いろんなお仕事をされてる会社がありますよね。いろんな社会問題があると思うんです。
社会活動を行う考え方の中で、人の善意で動くというのは素晴らしいことです。ボランティアや補助金を使ってという考えもあります。私の考えは宣伝目的であったり本業につなげる目的であっても、社会が良くなることをするのだったら、それでいいじゃないかと考えています。
弊社のように小さな会社ですと、判断も動きもスピード感を持って活動できます。また、地域の方々が笑顔で楽しまれている姿を見られることは、社会活動であれ本業であれ嬉しいことです。
私腹だけを肥やすのは問題だと思いますが、お金がないと社会活動もできないわけです。自分も楽しみながら、社会に還元できる形が理想だと思っています。
自分も喜べて、社会も喜べて、弊社で働いてくれている方々が誇りに思えるような活動をし、社会の人々にご納得いただき喜んでもらえる絵を描かないといけないと、常に思っています。
宣伝目的で社会活動を行っていくことが、結果的に社会も弊社もよくなるようにこれからも活動を続けていきます。
本記事は、堺市のSDGs賛同団体「DIYのいえ」様に対する実地インタビューに基づいて構成されています。
内容は録音・録画に基づき、代表者の許諾を得た上で掲載しております。
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